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【医学部】慶應義塾大学医学部合格のケース

慶應義塾大学医学部合格のケース

現状

既卒生男子、医学部志望。小論文・面接対策を希望。医療系小論文がうまく書けない。基礎知識などはそこそこあるが、思想・哲学を深く理解しているわけではないので、どうしても薄っぺらい論文になってしまう。自分で考えているというよりは知識のつぎはぎのようなものになってしまっている。

対策

医療系小論文の基礎知識を充実させる。
医療に通底する思想や哲学・ストーリーについて学ぶ。
小論文の構成(型)を出題パターンに分けて学ぶ。
入試問題を解き、応用力をつける。
面接対策に、問答、ディスカッションを日常的に行う。

詳細

このN君は、まじめでやる気もありましたが、どうしても納得がいく小論文が書けないでいました。

小論文はそもそも知識偏重教育の反省として出てきた科目です。したがって従来の読解力に加えて、論理的思考力や文章構成力、普段からの関心・教養の広さが問われることになります。N君は、勉強慣れはしていたものの、知識の詰め込みに偏っていました。正式なアウトプットの訓練はなされていませんでした。それゆえ小論文が、観念的に過ぎてしまい、しかも表面的な内容になっていました。

小論文についても、様々な医療用語(インフォームド・コンセント、QOL、パターナリズム、再生医療、高齢者介護、ターミナルケア、地域医療など)には詳しいのです。しかし、なぜそのような用語が生まれてきたのか、その背景に流れている思想は何なのか、近代科学とは何でそれがどのように現代の問題につながっているのか、自分はどの立場に立ってどんな貢献をしうるのかといった哲学が不在でした。

そのため解答は、どうしてもつぎはぎで一貫性がなく、抽象的・観念的なものになってしまっていました。また、受験科目以外の関心が薄く、社会に広く目を向けていないという点も問題でした。小論文は思考力を問いますので、医療系小論文とは限定されがちですが、国際や教育、社会問題、働く意味など様々なテーマについて考察しなければなりません。さらに慶応の場合自己分析や志といったものも求められます。とてもじゃないですが表面的な受け売り文をつぎはぎしたり、あらかじめ用意しておいた回答を暗記して話したぐらいで合格は望めません。

慶応医学部クラスになると思考の深さを徹底的に問われます。発している言葉が自分の言葉かどうかを問われます。

N君は受験勉強に打ち込んでいましたので、新聞を読むなどして考察を深めることはありませんでした。もちろん多くの受験生に共通したことではあります。

このような状況に対し、まず、医療系小論文の基礎知識の背景にある思想について学びました。例えば、「自由主義と医療技術の発展により『生命の尊厳』だけでは解決のしがたい問題が登場してきた→『生命の質』という概念の登場→その人にとって価値ある生き方をするためにはその本人主体の意志決定が必要。→意志決定のためには正しい情報が必要。→『インフォームド・コンセント』という概念の登場」という流れがあることを理解してもらい、重要な単語がどのような文脈の中で位置づけられるのかを把握しました。(医療訴訟事情から導くパターンなどもあります)

このようにあらゆる医療用語は単独で存在しているのではなく、ある文脈の中でいきいきと存在しています。その用語の背景にあるストーリーを理解することで、どのような設問にも、思想・哲学をさかのぼって深い議論ができるようになります。

このように各医療用語を、思想・哲学とストーリーの中で理解し、それぞれを有機的につなげてもらいました。授業においては各回で用語を深く解説していきます。もちろん、自分の頭で考えてもらう時間をとりながらです。対話を重視し思考を促進させます。こうしてバラバラだった断片的な知識は有機的につながっていきました。

さらに、医療系の本を時間が許す限り読んでいきます。バイオエシックスなどを中心に読みます。トータルで10冊を熟読しました。これらの本を精読することで型を学ぶのです。受験用小論文対策の本を読むのは誰でもやることです。しかし、それらはうまくまとめられてはいますが、深い部分まで言及できていません。網羅性はあるものの思考の掘り下げがなされていないのです。実はこれは英語対策にも効果があります。医系英語は以上のような内容の文章が出てきます。そのとき少しでも予備知識があるととても有利に読みすすめることができるのです。

こうして、難関大学の教養課程で学習するような内容を自分のものにしていきます(特別なレジュメを使います)。

以上の学習と同時に、小論文の型についても学習しました。小論文には一定の出題パターンがあるので、それに対してどのような型で解答すればよいのかを学んでいきます。N君は複数の大学を受験しますので、複数のパターンに対応する必要がありました。テーマ型、課題文型、資料型の3つです。

それぞれにつき徹底的に型を学びます。そもそも論証とは何かから始まって、文の正しい書き方、理由説明、具体例、経験、対・比較、引用、反論・再反論、資料の読み取り型、仮説の構築、要約の仕方など、論文の技術や決まり事を学びました。

12ヶ月を経過した時点でN君は、医療用語の背景にある哲学と論文の型を自分のものにすることができました。以降はこれまで学んだことを実践で研いて応用力をつけていきました。実際の入試問題などを解き、議論を進めていくことによってこれまでの知識をより生きたものにしていきます。

議論を進めていって感心したのは、N君がある論題をめぐってクリエイティブな思考を始めるようになってきたということです。あえて、無難な論(一般的に正しいとされている論)を覆し、より深い論に発展させていくという手法です。現代文における評論では一般論を否定し持論を展開するというのは常套手段ですが、厳しい立証責任を要求されます。

たとえば、N君は「出生前診断の是非」の問題提起について以下のように論じます。(N君の文をそのまま抜粋)

「出生前診断の是非を論じる前提として、その肯定派と否定派の背景には大きな価値観の対立がある。すなわち、肯定派には「個人の幸福の追求」およびそれを背後から補強する「自由主義」が、否定派には「全体としての倫理の追求」およびそれを背後から補強する「共同体主義」が、控えている。一見、それぞれの立場の利益の追求に見えるが、実は「個人の自由」と「共同体の倫理」のいわば代理戦争の構造をなしているのである。

こう捉えると「出生前診断は個人の幸福追求という権利の行使であるから問題ないではないか」という主張は、共同体の倫理「生命は人為が侵すべからざる神秘であり、その神秘を無為の自然に享受しその結果を受け止める」を真摯に実践している人々の過去現在未来の努力を、間接的に無価値なものにする可能性がある。そう捉えると「幸福の追求」が全体の迷惑になっている側面も否めず、するとこの問題は迷惑の範囲をどのように定義するかということにつながってくる。よって人が人にかける迷惑の範囲が問題となる。

この問題提起は、肯定派と否定派の思想の深層に潜む対立構造を明らかにし、一般的に言われている「自由主義における幸福の追求」に疑問を投げかけています。これは人に迷惑をかけなければ何をしてもよいという発想から抜け出し、幸福の追求が実は眼に見えない部分で取り返しのつかない影響を与えうるのではないか、という精神性の高い論に仕上がっています。まるでギリシャの哲学者のようです。言いすぎでしょうか。いえ、エリートはそうでなければなりません。

しかし、このように本当の意味で自分で考えることを楽しめるようになったときに、小論文を得意教科とすることができました。どこからどう質問がきてもある程度以上のことは答えられるという自信がついてきたのです。

また、一度読んだり解いたりしたものは、次にも使えるように、ノートにストックしていきました。これは料理にたとえるとある程度下ごしらえした素材みたいなものです。料理番組でよくある「こちらに先ほどつくっておいたものがあります」と用意していたものを取り出す要領です。こうすることで本番で似たような問題が出たときに、即座に対応できるように工夫しました。

このような努力の結果、N君は志望校に合格することができたのです。もちろん小論文だけの手柄では決してなくN君の総合的な努力の結果です。小論文の考え方は医学部に入ってもきっと役に立ちます。人の幸せについて深く考えることのできる精神性の高い素敵な医師になってください。

結果

慶應義塾大学医学部合格!