物語文・小説を得意にするために簡単な小説を作ってみる

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自分で自分の物語を作る

国語で、物語文・小説の問題が苦手な子はたくさんいます。特に男の子は小説問題が苦手になる傾向があるように思われます。また女の子でも考えすぎることによって、得点を落とすことがあります。

そんな物語文・小説が苦手な生徒に、当国語専門塾では小説の簡単な作り方を教えています。

自分の経験を物語にするのです。

一度自分で作ってみることによって、文章の構造がよくわかってきます。

一番短い物語

ずばり、多くの物語は「変化」です。「変化」とはAという状態からBという状態になることですが、このAとBとは真逆にしたほうが面白くインパクトのあるものになります。例を見てみましょう。

シンデレラ
「不幸」→「幸せ」
「貧乏」→「裕福」
「憎しみ」→「愛」

桃太郎
「弱い子ども」→「強い一人前の男」
「孤独」→「連帯」

はじめてのおつかい
「臆病」→「勇敢」

 

「変化」のパターン

他にも次のような「変化」がよく出てきます。

子ども→大人
あせり→落ち着き
疑う→信じる
不満→満足
不安→安心
軽蔑→尊敬
恥ずかしい→誇らしい
失望→希望
劣等感→優越感
疎遠→親密
無知→気づき
かたくな→素直

こんな風にまず対比を考えてください。

これが一番簡単な短い物語です。いろいろ作ってみましょう。

「最初は、何もできなくて、臆病だった。しかし、最後には、自分の力で行動して、勇敢になった。」(はじめてのお使い)

「最初は、家族に愛されておらず、苦しんでいた。しかし、最後には、王子様に愛され、幸せになった。」(シンデレラ、落窪物語)

「最初は、親に守られていたため、依存していた。しかし、最後には、自分で誰かを守るために、自立することができた。」(はてしない物語、ドラクエ)

「最初は、なんとなくなじめなくて、学校が嫌だった。しかし、最後には、みんなと仲良くなって、学校が大好きになった。」(チビドラゴン)

「最初は、皆に認められていて尊敬されていたから、有頂天になっていた。しかし、権力者に嫌われてしまったため、殺されることになり、絶望的になった。」(千利休)

「最初は、生活を守るために、自分の利益ばかりを考えていた。しかし、最後には、人として生きる道に目覚め、皆の利益も考えられるようになった。」(7つの会議)

 

いかがでしょうか。その「変化」が急激であればあるほど、面白いのです。

微妙な変化だとあまり面白くないと思うかもしれません。でもそれでいいのです。いくらそれが小さな変化でも、本人にとって大きな意味があればいいのです。本人にとって深い意味があればいいのです。あなたもそんな経験ありませんか。ないっていう人でも探せば必ずあります。

それを分かってもらうのが腕の見せ所なのですね。

さあ、あなたの身の回りの、小さな変化、大きな変化を探してみましょう。

そのとき、さっきの述べたように、正反対の言葉を使って表すととてもエキサイティングです。少し練習してみましょう。

全くの白紙からやるのは大変ですので、いくつか質問します。
Qあなたが大きく成長できたと思ったのはどんなときでしたか。
Qあなたが「前と変わったなぁ」と思うところはどんなところですか。
Qあなたが今までできなかったけど、出来るようになったところはどんなところですか。
Qあなたが一生懸命がんばったことは何ですか。
Qあなたが悩んだり、考えたり、ぶつかったり、こまったりしたことはありますか。
Qそんな変化があったとして、その変化を起こしたきっかけや出来事とは何ですか。

この答えをヒントにして、ものすごく短い物語を作って見ましょう。

 

場面の設定

では次にこの短い物語をどんどん膨らませていきましょう。つまり具体的にしていくのです。題材はこれを選びました。

「最初は、何もできなくて、臆病だった。しかし、最後には、自分の力で行動して、勇敢になった。」

これは有名な絵本「はじめてのおつかい」と同じ型です。

なお、はじめてのおつかいは「お母さんにお使いを頼まれて、はじめてお使いに行くみいちゃんが、いろんな出来事を乗り越えて、最後にお使いをやり遂げる物語」です。クライマックスは、お店の人を呼ぶときに小さな声しか出せなかったみいちゃんが、勇気を出して大きな声でお店の人を呼ぶところです。

こんな物語はみんな持っていますよね。「最初できなかったけど、勇気を出してできるようになったこと」は、みんな持っているはずですからね。忘れているかもしれませんが・・・

では話をふくらませていきましょう。まず「最初は」のところを具体的にしていきます。具体的にする際には次のことを意識してください

場面1
時「いつ」 秋 朝
場所「どこで」 天神行きのバスの中
登場人物「だれが(登場人物)」 私 おばあさん おばさん 青年
出来事「何をした・何をしようとした・何が起こった」 席を譲ろうとしたができなかった。おばさんが先にゆずってしまった。おばさんは足が悪かった。
心情の変化「どんな心情変化があったか」 罪悪感 自己嫌悪
会話「どんな会話があったか」
誰かがかわりにゆずってあげたらいいのに

という質問をすることで、どんどん膨らませていきます。特に「いつ」「どこで」「だれが(登場人物)」「何をした・どうした・何をしようとした」は重要です。

実はこれ、プロットと呼ばれるものです。プロットとは小説の場面を構成するための設計図のようなものです。何の設計図もなしに、文章を構築していくのは、設計図なしに家を建てるのと同じくらい難しいことです。ではプロットを文章にしていきましょう。

こんな感じです。

場面1
私は13歳で中学生だった。ある秋のさわやかな朝、バスに乗っていた。天神に出かけて服を買いに行こうとしていたときだった。私は前の席に座って本を読んでいた。バスは混んでいてあいている椅子はもうなかった。
しばらくすると、バスが止まって腰の曲がった80歳くらいのおばあさんが乗ってきた。おばあさんは重そうな風呂敷包みを手に杖をつきながら、ゆっくり階段を上ってきた。私はとっさに席をゆずってあげなきゃと思ったけれど、どんなタイミングで言い出したらいいかつかみかねていた。誰かが代わりにゆずってあげたらいいのにと心のどこかで周りを非難しながら、声を出さなくても済む理由を探していた。時間稼ぎをしていたのかもしれない。声を出すのがこんなに恥ずかしいなんて思ってもいなかった。すると目の前のシートに座っていた50代ぐらいのおばさんがおばあさんに席を譲った。おばあさんはすまなそうに頭を下げて重い体をゆっくり腰掛けた。
私がショックだったのは、そのおばさんが少し足を引きずっていたことだ。私は秋晴れのさわやかな朝に強い罪悪感にさいなまれた。さっきはスマートフォンをいじっていた青年が急に居眠りし始めたのを、嫌悪と共犯意識の入り混じった目で見ていた。私もあなたと一緒なんだ。

さあ、こうなるとどんどん進められそうですね。
次の場面です。次の場面もプロットを考えます。

場面2
時「いつ」 おやつの時間
場所「どこで」 天神のスターバックス
登場人物「だれが(登場人物)」 友子 私子
出来事「何をした・何をしようとした・何が起こった」 友人に相談した
心情の変化「どんな心情変化があったか」 反省 周りの目を気にしすぎることを恥じた
会話「どんな会話があったか」
なんで素直に譲れなかったのかな
私子ちゃんは周りの流れに合わせすぎるところがある
調和を大切にするのはいいけど、突出しなければいけないときがある

このとき意識すべきは、何か「きっかけ」や「出来事」があって人は「変化」しますので、自分を変えた「きっかけ」や「出来事」を考えてみます。変化する前には何か「きっかけ」があって「ゆらぎ」が生じます。「ゆらぎ」とは今までの自分が変わるときに、不安定になることです。悩んだり、困ったり、苦しかったり、考えたり、ぶつかったり。そんな段階があります。こんどは「ゆらぎ」の段階に入りましょう。この「ゆらぎ」が大きければ大きいほど、深ければ深いほど小説は面白くなります。今回のきっかけは「友人の言葉」です。上のプロットを文章化してみましょう。

場面2
友子と一通りの買い物を終えて、スターバックスでお茶をすることにした。今朝のバスでの後悔は、徐々に私の性格についての自己批判に変わっていった。買い物はもちろん楽しめたのだけど、何かひっかかるような苦しいような気持ちがつきまとった。
「なんかあったでしょ」
友子はカフェラテをすすりながら、のぞき込むようにして私と目を合わせた。
「分かる?」
「分からないわけがないじゃない」
と笑った。
私は観念してことのてん末を詳しく友子に話す。
「私子ってさ、周りに合わせすぎるところがあるよね」
「そうかな::::::」
「ふふ、そうだよ」
友子はまっすぐ目を見る癖があるので、なれている私でも少したじろぐところがある。
「みんなの空気を尊重するってとても大切なことだと思うよ。それにそれが誰にでもできるわけじゃないしね」
うつむきがちな私に友子はゆっくりと続けた。
「でも、誰かを助けたり、何かを進めたりだとかするときってやっぱ抵抗があるものだよ。それは空気を変えてしまうから」
「うん・・・・・・」
「何かを変えてしまうことって怖いよね。でももし変えないで待っていて、それで後から苦しくなるんだったら、それは変えてしまえっていうサインなんじゃないかな」
笑顔で、私の気持ちに配慮してくれる友子だった。
いつもよりアイスコーヒーが苦く感じた。

そして最後。今度は今までの自分のカラを破って、新しい自分になるシーンです。このプロットを作ります。これまで「周りに合わせてばかりで臆病だった私子ちゃん」が、「勇気を出して周りを引っ張っていく勇敢な私子ちゃん」に変化していきます。

同じバスのシーンだと不自然なので、教室での出来事にしてみましょう。

場面3
時「いつ」 月曜日 六時間目
場所「どこで」 教室
登場人物「だれが(登場人物)」 私子 友子 先生 クラスメイト
出来事「何をした・何をしようとした・何が起こった」 病子ちゃんにプリントを届ける
心情の変化「どんな心情変化があったか」 葛藤 積極的に手を挙げて名乗り出た
会話「どんな会話があったか」
だれかお願いできないかな
黙りこむクラスメイト
私にやらせてください
部活いこ!(満面の笑顔)

これを文章にしていくのです。周りの目を気にして良い子になりきれなかった臆病な私子ちゃん。最後には小さなことだけど勇気を出して、変化=成長することができました。いい話ですね。こんな風に「最初:臆病」→「ゆらぎ」→「最後:勇敢」という「変化」を描くことが出来たら、もう小説が書けることになります。

 

場面3
週が明けた。相変わらずけだるい月曜日ではあるが、私は少し迷いがなくなったような気がする。六時間目は担任の授業だった。終わり際に、先生が言った。
「病子にこれ持っていってくれる人おらんか」
病子ちゃんは、病気で休みがちで、親しい友人もいない。どこか悲しげで人を避けるようなところがあるから、それを察してか誰も近寄ろうとはしなかった。無論私もそうだったのだが。
沈黙するクラスメイト。誰もが、誰かが持っていってあげればいいのにと暗黙の押し付け合いをしているように感じた。ちょうどバスでの私のように。こんなとき、気配を消すのは私の得意技だった。
ここで手を挙げたらみんな私を見るだろうな。いい子ぶっているって思うかな。しかし、それが何だというのだろう。思うからどうだっていうんだろう。これまでの自分が育ててきた恥じらいと、状況を変えよう、自分を変えようとする勇気。いつもなら9対1ぐらいで負けていたはずだけど、友子の言葉と、バスでの後悔とが私の背中を押す。それでも4対6くらいでぎりぎりだった。抵抗はあったけど、やっぱり苦しかったけど、もうあんな自分はいやだ。だから、手を。
「私にやらせてください」
「お、めずらしいな、私子。それじゃ頼むよ、すまんな」
先生はいたずらっぽく笑った。
友子はにやにやして私に親指を立てた。

学活が終わると、友子は私の背中を手のひらでたたいて満面の笑顔で言った。
「さ、部活いこ!部活!」
私も笑って、
「うん、行こう!」

 

そして、もっと場面を増やしたい場合は、「ゆらぎ」や「その他のシーン」の部分を膨らませていけばいいのです。いろいろな膨らませ方がありますがまずはそんなところで。

さあ、この型であなたの物語を書いてみましょう!

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