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小論文の思考の深め方1〜深い部分での対立を意識する〜

深い部分での対立を見抜く

小論文の基本を押さえたら、次は思考の深め方を勉強していきます。小論文の解答を一読したときに、「あ、この人は深く物事を考えられる人だな」あるいは「あ、この人は全然自分の頭で考えていないな」とわかってしまいます。

では、「深く物事を考える」というのはどういうことでしょうか。私が考えるいくつかの要件がありますので、以下に列挙してみます。

ある判断や意見の表面的なやり取りに惑わされず、そこにある世界観、思想、信条、哲学、主義に迫っている。

あえて卑近な例を挙げましょう。たとえば夫婦喧嘩。犬も食わないといわれていますが、小論文においてはこれをただのありふれた小競り合いと一蹴してはなりません。二人の奥底に潜む主義の対立と捉えます。二人が何を大切と考えているかを検証しなければなりません。もしかすると、妻は教育が最も大切と考えており、夫は人間関係が最も大切と考えているかもしれません。教育を優先するか、人間関係を優先するかにおいて、両者のぶつかりあいがいたるところで、一見こまごまとした、犬も食わないと思えるほどくだらない題材で繰り広げられるわけです。

でも実は決してくだらなくはないのです。くだらなく見えるささいな出来事をめぐって、深い部分つまり「価値観、世界観、主義、哲学、信条」の代理戦争が繰り広げられているのです。

「喧嘩やよくないからやめるべきだ。二人はお互い歩み寄るべきである。」
これが浅い論文。

「この出来事は、そもそも教育を最優先とするか、あるいは人間関係を最優先するかという問題をはらんでいる。よって、二人はお互いがどのような価値観を重視しているのかの優先順位を明らかにする必要がある。」
これが深い論文です。

少しはイメージできましたか。深い部分でどんな対立があるのか。それを見抜く目が深い論文に繋がっていきます。原発の可否、がん告知のケース判断、などなど。この視点は必須です。

現象から本質を見抜く。これがひとつめのポイントです。

【注意事項】

●課題文の多くは「二元論」の構造を持っている。何と何が対立していて、筆者がどちらを勝たせたがっているか、なぜ勝たせたがっているかを把握する。

●問題・矛盾・対立の根源には、相対する2つの価値観が存在する。「進歩と伝統」「精神と物質」「全体と個人」「生命の尊厳と人生の質」など。この構造を見抜くこと。

例1 原発の賛否について
「経済を発展させ続けることが人の幸せにつながる(物質)」vs「経済発展がなくても自然と調和して暮らすべきだ(精神)」

例2 尊厳死は賛否について
「人の生命は無条件に尊いものでありどんな状況でも維持するように努めるべきである(生命の尊厳)」vs「人は人間的に生きるからこそ価値があり、それがかなわない状況では死もやむをえない(人生の質:QOL)」

●ある人・共同体・組織・国の意思決定には、その根底に「思想・価値観・哲学」が存在している。これを見抜くこと。

●対立する価値観のどちらかが絶対的に正しいということはない。時と場合によってどちらがよいかは変わる。
Ex)高度経済成長期→「物質的価値観優位」、現代→「精神的価値観優位」

●多くの場合、対立する二つの価値観のバランスを取ることが重要という結論になる。どちらかに偏りすぎると問題が生じる。

●ただしバランスを取るのはとても大変。人は白黒つけたがるところがあり、グレーの状態を嫌うから。